あるお客様からのご紹介で、地域密着型のサービス業を営む企業様の採用支援をさせていただく機会をいただきました。

長年採用活動を続けているものの、コアポジションが埋まらない。さらに、昨年採用した若手社員も、1年が経過しているにもかかわらず成果が出せていない——。そんな状況の中で、弊社へご相談をいただきました。

最初の打ち合わせでは、

「育成している余裕はないので、経験者で即戦力が欲しい」
「将来的には社長の右腕になれる人材を採用したい」
「とにかく数字を上げられる人が欲しい」

というご要望をいただきました。

こうしたお気持ちは、私自身も経営者として非常によく理解できます。

しかし、現在の採用市場において、

・経験がぴったり合う
・幹部候補になれる
・自走して成果を出せる
・さらに給与水準も高すぎない

——そのすべてを満たす人材は、ほとんど存在しません。率直に言えば、「理想通りの採用」は、今の市場では極めて難しくなっています。

とはいえ、私たちも最初から否定するのではなく、「まずは一緒にやってみましょう」というスタンスで支援を開始しました。

支援開始後、すぐに最初の応募がありました。

未経験の30代の方(以下、Aさん)でした。

お客様としては、書類を見た時点では「今回はNG」というご判断でした。しかし、最初の応募者ということもあり、また、私自身は書類から大きな可能性を感じていたため、無理をお願いして面接へ進んでいただき、私も同席させていただくことになりました。

結果として、Aさんは人物面で非常に高い評価を受けました。

ただ、お客様には「今回は経験者採用」という強いこだわりがあり、一旦は不採用という結論になりました。

しかし、日々多くの採用現場に立ち会っている私から見ると、Aさんは未経験ながら、なかなか出会えないレベルの人材でした。さらに、この会社の風土や価値観とも非常に相性が良いように感じられました。

そこで私は、

「NGにするのはいつでもできます。まずは選考だけでも続けてみませんか?」

とご提案しました。

また、Aさん自身も、

「志望度は高いが、他社も見たうえで判断したいので少し時間が欲しい」

という意向をお持ちでした。

そのため、単なる選考だけではなく、会社見学や社員面談なども定期的に挟みながら、時間をかけて関係性を築いていきました。

その間も、弊社の支援によって応募状況は順調で、ご年齢やご経験だけを見ると「理想的」と言える候補者も複数いらっしゃいました。

もちろん選考は進めていきましたが、重要ポジションということもあり、お客様は最終判断に迷われていました。

特に、

「成果は出しそうだけれど、本当に当社の想いに共感してくれているのか、確信が持てない……」

という言葉を、何度も口にされていました。

そこで、弊社のワークサンプルテストを導入いただき、組織適性を可視化していきました。

すると、社長が迷われていた候補者の方々には、組織との大きなミスマッチがあることが分かりました。

選考に同席されていた社長からは、

「経験ばかりに目が向いていましたが、組織適性を見ることの大切さを、本当に実感しました」

というお言葉もいただきました。

ワークサンプルテストを活用すると、面接だけでは見えにくい部分が明確になります。経験や肩書きに引っ張られず判断できるため、特に重要ポジションの採用では非常に有効です。

さらに社長は、過去の採用についてこんなお話もしてくださいました。

「以前、有名大学卒で非常に頭の良い方を採用したことがありました。仕事はできたのですが、『こんな朝礼は無駄だ』『こんな社員とはやっていられない』と不満ばかり口にして辞めてしまったんです。今思えば、こういうことだったんですね……」

そうして選考を重ねる中で、私たちと社長は、ひとつの結論にたどり着きました。

「結局、最初にお会いしたAさんが、一番この会社に合っているのではないか」

最初の面接から2カ月が経過していましたが、Aさんとの関係は続いており、

「いろいろな会社を見ましたが、やはりこちらの会社で働きたいです」

というお気持ちを持ってくださっていました。

そこで、Aさんにもワークサンプルテストを受験いただいたところ、これまでの候補者の中でも圧倒的に高い結果が出ました。

当初は経験やスキルにこだわっていた社長も、その結果をご覧になり、

「この人しかいない」

と正式オファーを決断。Aさんは内定・入社となりました。

最初にお会いしてから、実に3カ月後のことでした。

そして、重要ポジションの採用成功をもって、弊社の支援は終了となりました。

ちなみに、創業以来「3カ月で支援終了」は最短記録です。

もし最初の出会いの時点で、Aさんを書類だけで不採用にしていたら——。採用には、もっと長い時間がかかっていたかもしれません。

弊社が間に入ることで、少しでも付加価値を提供できたのであれば、とても嬉しく思っています。

後日談になりますが、Aさんは入社後わずか数カ月で、社内の経験豊富な社員と肩を並べるほど活躍されているそうです。

これまでの支援経験の中でも、「未経験でも、合う職場では立ち上がりが非常に早い」というケースを数多く見てきました。

面接だけでも、適性検査だけでも、AIだけでも分からない。

“人が関わるからこそ見抜ける価値”に、これからもこだわっていきたいと思います。